第17回日月会賞 報告


第17回 日月会建築賞 ご報告 2015.08.25.


開催日:

2015年 7月11日(土)

● 審査員

審査委員長/内海 聡  [34期]  内海聡建築設計事務所主宰

審査員/ 藤原 成暁 [11期] ものつくり大学教授

笹口 数  [20期]  美術作家

新庄 哲平 [39期] 家具デザイナー

西村 萌  [40期]  KAJIMA DESIGN 勤務

● 審査結果

太陽賞  「反転のうずまき」 羽根田 雄仁

満月賞  「トレンチのフォリー」平川 凌成

三日月賞 「Kichijoji Contemporary Art Museum」 山田 陽平

新月賞  「鎌倉こども館」 荒木 愛香

七夕賞  「ヒマラヤ」 寺田 篤実

● 審査方法

太陽・満月・三日月の三賞を 公開審査後、審査員の投票で決定

三賞に入らなかった作品の中から、参加OBの皆さんの投票で「新月賞」を決定

上記四賞以外の作品から、前年度受賞の4年生が審議の上「七夕賞」を決定


【受賞作品のご紹介】

○ 太陽賞
「反転のうずまき」 羽根田 雄仁 (源スタジオ)

(受賞のコメント)

今回の設計課題は、敷地に訪れたときの最初の主観的な印象のみを根幹的なテーマとして進めました。簡潔に言うと、敷地から得た「起伏した森という外部環境に潜む内部的状況」を与条件として設定し、その中の建物を設計することで、人びとの外部-内部という領域判断に揺さぶりをかけることができないか、というものです。人の意識的な問題に絞って設計を進めたため、プログラムや機能的なところが御座なりになってしまった感はあるのですが、主観的な印象を形態へと建築へと昇華できたところを評価して頂いたことは嬉しい限りです。
また、短時間に連続でプレゼンをこなす過程では、案の本質や伝えたいことがどんどん洗練されていく感覚を覚えました。各審査員側からのリアクションにおいても共通する疑問やアドバイスを見出すことができた為、これからの設計課題に繋げていけると思います。ありがとうございました。

(審査委員長からの講評)

国分寺黒鐘公園の敷地を訪れて樹々に身を包まれた時、作者はそこに「内部性」を感じたと言う。この外部環境における内部性というアンビバレントな実感が作品の発想源となって、建物が計画されている。建物はうずまき状の断面を持つクローズした彫塑的なボリュームとなっており、中を巡っていくと最後に空を切り取る大きなトップライトに出くわして、今度は内部環境における外部性を体感するという「反転」のストーリーで語られている。地域センターとライブラリーが入る低層部においてトップライトだけに頼るあまりに閉鎖的な造りに違和感を感じて私個人は加点しなかったが、上記の大きなシナリオの中での仕掛けとして解釈すると、確かによく出来た作品であると理解できた。周辺環境から概念的事象を抽出して建築計画の中に落とし込む力とそこにデザインを加えた上で自らの体験や感性を伴って語る姿勢は大変評価された。

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○ 満月賞
「トレンチのフォリー」 平川 凌成 (源スタジオ)

(受賞のコメント)

国分寺崖線の一角、史跡として扱われている対象敷地に対し、何か史跡にアプローチしたフォリーができないかと思い、この敷地の歴史的文脈を掘り下げ、浮き出てきたものを拾いながら設計していきました。自分である程度頭の中で整理し、プレゼンしていましたが、頭で考えていることと、言葉にすることにかなり差を感じました。
何度もプレゼンしていく内に、プレゼンがどんどんアップデートされ、同時に思考も整理されていき、その差が少しずつ埋まっていく感覚で、言葉にするのは重要だと痛感しました。
審査会後の懇談会も含め、貴重な体験でした。ありがとうございました。

(審査委員長からの講評)

作者は任意の場所に建築することを選択せず、国分寺崖線の史跡調査であるトレンチ調査にて掘り込まれた2m幅程の溝をそのまま残して、低い腰壁に簡素な屋根を架けただけのフォリーを創りだした。地層断面の上に建つ腰壁は遺構を掘り出した際の土を使った版築で出来ており、屋根はその版築の型枠材を再利用して造られている。ダイアグラム的に提示された小さな模型や落ち着いたトーンのプレゼンボードは、この作品性に則して控えめながら印象的に表現されており、作者の建築観や作品が醸し出す余韻のようなものが多くの審査員の評価を得た。非常に規模の小さな計画ではあるが、敷地の持つ歴史やコンテクストに真摯に取り組んだ末にたどり着いたであろう建築行為に対する慎重な姿勢や、作品のあり方、造られ方を含めたその語り口には、他の作品と一線を画した芯の強さがあり、計画規模の大小を補って余りある価値を見出すことができる。

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○ 三日月賞
「Kichijoji Contemporary Art Museum」 山田 陽平 (高橋スタジオ)

(受賞のコメント)

この度は、とても良い経験となる場を用意していただき、また三日月賞をいただけたこと、
とても嬉しく思っています。ありがとうございました。
今回の設計課題では、都市に置かれる建築はどうあるべきか、という問いからスタートしました。また、設計するための今ある型を素直に受け入れるのではなく、まず疑い、そこから新しい型へつながる何かを作れないかという挑戦をしようと考えていました。それは建築物だけの問題ではなく、より多角的なアプローチをし、それらを統合する作業が必要でした。実際に発表した作品では、審査員の方々から厳しい指摘をされ、見落としていた考えるべきポイントがまだまだたくさんあり、自分の至らなさに気づかされました。
今後も設計での挑戦的な姿勢は忘れずに、また今以上により多くの人々を驚かせ、議論を巻き起こせるような問題作を目指し、しかもそのうえで納得させられるような、そんな設計をできるよう励みたいと思います。ありがとうございました。

(審査委員長からの講評)

吉祥寺の街中に、半透明なスキンに覆われたボリュームの中に大小様々な球状の展示室が浮遊する美術館を計画した作品である。ホワイトキューブの抽象性にメスを入れて、「空間から建築のラインを消す」という作者の思いが球体という展示空間を生み出した。おそらく絵画というよりも彫刻など立体を中心とした展示に向いていると思われるが、なるほど実現すれば、この展示空間がもつ求心性は展示作品との関係において力強い一体感を生み出して、鑑賞者を包み込むことだろう。ただ残念なのは、動線や作品搬入路の計画が解ききれていないのか、球体にシャフトが貫入していたり、余計なスラブが追加されていたりして、作者が思い描いた抽象性が最良な形で具体化されているのかという点においてはおおいに疑問が残った。その辺りにこの作品が発展する余地がまだまだ残っているが、この作品が提示した批評性は意義深いと感じた。

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○ 新月賞
「鎌倉こども館」 荒木 愛香 (河野・原田スタジオ)

(受賞のコメント)

こどもを中心としたコミュニティ施設を設計しました。単純でありながら、こどもが何度来ても楽しめる大きな遊具のような場…、「建築遊具」を目指しました。単純さを評価してくださる方、そうでない方、たくさんの方々の意見を頂けてとても勉強になりました。
痛感したのは、まだまだ空間の可能性を広げられる余地があるということです。今後は今まで以上にスタディを重ね、コンセプトやデザインを考え抜いた説得力のある作品を作らねば、と思います。
自分の不甲斐なさを思った反面、嬉しい意見もありました。作品を見てくださった方々ほぼ全員が、こどもにとって本当に楽しそうな空間だと言って下さいました。
頑張って良かったなと、素直に嬉しく思います。
日月会賞、とっても楽しかったです。このような機会を設けて下さりありがとうございました!

(審査委員長からの講評)

鎌倉の町に不足した子供の居場所をダイナミックな階段空間を通じて実現しようとした計画である。江ノ電方向を眺める外の階段と直行方向に配置された内部の階段、二つの取り合い方はなかなか魅力的で、子供たちの遊びや学びの場、また付随するコミュニティの場を生み出して、様々な活動が随所に発生しそうな雰囲気が大変よく伝わってくる作品であった。明快で大きな構成を軸にしつつも、様々な細やかな建築的な仕掛けが施され、全体として裏も表も前も後ろもなく、どこに行っても子供たちが楽しめそうな空間作りが成立しており、それを意図した上で隅々までやり切った力を評価したい。インパクトあるこの作品は1次審査で票を集めたものの、公開審査を経て独特の気付きやテーマ性に優れた他の作品に3賞を譲る形になってしまったが、労を惜しまず、何より本人が楽しんで設計している風がとても「ムサビ生」らしく印象的であった。

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○ 七夕賞
「ヒマラヤ」 寺田 篤実 (鈴木スタジオ)

(受賞のコメント)

七夕賞に選んで下さった先輩方と、審査して下さったOBの方々に感謝の気持ちでいっぱいです。自分の作品はまだまだ作品として足りない部分が多いので賞は期待していなかったのですが、七夕賞という立派な賞を頂いたことを素直に喜んでます。これから描き足せる部分は描き足していき、自信を持って作品を発表できるように頑張っていくので、見る機会がありましたら、一言アドバイスをください。自分の作品に対するコメントをしてしまうと言い訳が多くなってしまいそうなので、これで終わらせたいと思います。

(審査委員長からの講評)

谷中の長屋のひとつを古本屋にリノベーションした作品である。断面図にあるとおり、道路を隔てた対岸の塀にちょっとした仕掛けが施されている。既存塀に引っ掛けてテンポラリーに広げられる木製のベンチは座って本を読んだり、古本を並べたり、不要な時は折りたたんでおくこともできる。これにより、この古本屋の持つ親近感やゆったりとした時間が道路側までにじみ出して来て、ちょっと入ってみようかと思わせる雰囲気が楽しい。隣接するパン屋さんとの相性も良さそうで、このベンチを共有したり、延長していけるという点も面白いが、この平面的な展開性をプレゼンテーションとしてもう少し表現しても良かったのかもしれない。
この作品は審査員・卒業生による4賞が決定後、前年度の日月会建築賞受賞者の4年生による審査によって七夕賞に選ばれた。

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【審査委員長からのご挨拶】

私が学生の時に初めて催された日月会建築賞も今年で17回目となりましたが、近年は毎年のように改良が加えられて、日月会と研究室や学生が一体となった、素晴らしいイベントとして定着したことを実感しています。エントリー数はおそらく過去最高の38を数え、作品から放たれる意気込みをひしひしと感じながら、審査員長として、非常に有意義な一日を過ごさせていただきました。

さて、今年の特徴として、造形力あふれる力作が目立ったものの、それらの多くには票が集まらなかったという点がありそうです。もちろん造形力を磨くことは非常に大切なことですが、そこにある独自の解釈やストーリーの新鮮さなどが最後、評価に大きく影響しました。プレゼンテーションは学生の皆さんに主導権がありますが、その後の公開審査ではそのバトンは審査員に渡されます。苦渋の選択の末、ほんの数点のお気に入り作品を胸に公開審査に挑む時、審査員は既に作者の代弁者であり、応援者なのです。私たち審査員の脳裏では、印象を増幅させたり、時には不足に目をつぶって深読みしたりして、作品がひとり歩きを始めています。ただその時、デザインは良くてもやはり造形しか見えてこない作品はどうしても「ひとり歩き」せず、作者自らの気持ちや解釈をもとに語られた内容が造形との一致をみた作品が上位になったと感じています。笹口さんから「するorしない、ではなく、しないをする」という言葉がありましたが、時にはなぜ建てるのか、建てる意味があるのかといった根源的なところまで深堀りして発想することも必要かもしれません。学生の皆さんが今回のコミュニケーションを通じて様々な視点や多様な評価軸を感じられたならば幸いです。

その他、惜しくも選外となったが、個人的に触れておきたい2つの作品を紹介します。

源スタジオ、駒井慶一朗君の『100mの円環』。踏み分け道という切り口は興味深く、多様な屋根断面をもつ円環の造形や樹々の中の立ち姿もそれぞれ良さそうに思った。しかし、通路状の円環平面においてはその切り口である「踏み分け」がどうも発生しにくいようにも見えてしまったため、公開審査では何かと指摘するばかりになってしまったが、言葉を選んで丁寧に受け答えする彼の姿勢は非常に好感が持て今後に期待したい。

「身の丈の家」という課題の鈴木スタジオは身近なひとコマを大切にして渾身のドローイングで表現する作品が多く、審査員としてとても楽しませて頂いた。中でも現役の井戸を見つけて、谷中の路地にその井戸水で淹れるコーヒースタンドを計画した佐々木茜さんの『路地のふるまい』はかつての井戸を中心とした界隈性を想起させる魅力的な場を提供していて好きな作品だった。この課題で学んだ視点を大切にしてぜひ今後の制作活動に活かして欲しい。

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最後に、学生たちの熱意に触れたこの一日を通じて私自身も大変勉強させていただきました。
日月会関係者の皆さま、研究室の皆さま、出品してくれた学生たちに感謝いたします。

内海 聡(34期・内海聡建築設計事務所)

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審査員の皆様、お越しいただいたOBのみなさま、お忙しい中ありがとうございました。
大勢のみなさんに作品のプレゼをし、ご意見を聞いたことが、確実にエントリーしてくださった
学生のみなさんの明日への力となっていると、受賞のコメントからも読みとれました。
来年度の日月会建築賞にも、たくさんのOBのみなさまのご参加をお待ちしております。
どうぞ 来年も日月会賞建築賞へのご支援・ご協力をよろしくお願いいたします。

(黒沢 ミユキ 20期)

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