第16回日月会賞 報告

開催日:

2014年7月12日(土)

●審査員:

審査委員長/遠藤謙一良[18期]

審査員/丸川真太郎[9期]・林英理子[27期]・原田将史[35期]・川畑勝也[44期]

●審査結果:

太陽賞 「吉祥寺現代美術館」川田琴音

満月賞 「300000ミリメートルの本棚」遠藤貴大

三日月賞 「STEERING」斉藤有宏

新月賞 キラキラ橘商店街[Pick up girl] 田中楓

七夕賞 「つなぐ」三ツ井 岳

●受賞作品の紹介:

○太陽賞
「吉祥寺現代美術館」川田琴音

今回美術館を考えるにあたり、どのように周りの環境を引き込むかが私の中の一つのテーマでした。建築物にランドスケープや公園的な要素をプラスして行く際、内と外を行き来しながらの設計が難しかったです。日月会賞当日はOB、OGの方々にプレゼンし、厳しい意見や不透明な部分へのアドバイスなど、これから設計を続ける上で大切なお話をたくさん聞くことが出来ました。頂いた言葉を胸に、これからも日々精進して行きたいと思います。ありがとうございました。

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○満月賞
「300000ミリメートルの本棚」遠藤貴大

日月会の審査当日は十数回のプレゼンを行い、共感や批判されることを通して成長できたように思います。また自分がつくったものに対して、たくさんの人から意見をもらうことはとても嬉しいことでもありました。建築という分野でのコンペやプロポは一位にならなければ実際に設計されないので二位で満足せずに、今後はこれらの経験を生かしてより頑張っていきたいです。審査終了後の懇談会でも実際の設計の現場についてや昔のムサビの建築学科の様子など興味のある話題をたくさん聞くことができたので参加して良かったと思っています。ありがとうございました。

写真1

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スライド

○三日月賞
「STEERING」斉藤有宏

今回の課題敷地である国分寺崖線は現状では土地に入る動機が少なく、歴史的価値がある旧鎌倉街道や寺跡でさえ風化しつつある。今回の課題においてミュージアムという属性上から、外部から人を敷地内に導入する装置が重要になると考えた。
そして建築自体は崖線と溶け合うように意匠されそれは形状にも現れるべきであり、そうして出来上がった建築は崖線自体を展示へと昇華させ、日常の様々な時間で利用される空間になるように設計した。

普段のふとした時に感じるものをどのようにとらえ、建築という形状に落とし込むのに非常に苦労しました。今回の日月会賞で自分の作品を多くの人に見てもらい、その回答が少しでも他者を共感させることが出来るのかという疑問に多くの人から話を聞くことで、様々な表現や解釈があること、自分に至らぬところが沢山あることを改めて実感しました。それは今後に大いに役立つことであり、これからも今回培ったこと活かして精進していきたいと思っています。今回は本当にありがとうございました。

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○新月賞
キラキラ橘商店街[Pick up girl] 田中楓

大正時代、昭和初期からの長屋や古い家屋、町工場が混在している地域。道路が住宅の外廊下みたいだと感じた。路地を歩いていると、目に入るのが緑、玄関前から塀の前、塀の上、家の前どころか空地の前、どこの家でも一つは育てている。晴れの日は洗濯物があらぬところに引っ掛けられている。電信柱まで竿を伸ばし、なんとか干場を確保。自転車やバイクの上にも。傘、タワシ、自転車、植物、洗濯物、色々なところで色々な物が引っ掛かっていた。そこには何かしらの引っ掛ける手がかりがあった。引っ掛けるという行為から建築を考えようと思った。キラキラ橘商店街の入口にある一番星美容室の横の路地に面する壁面の一面に花屋を設計した。「引っ掛ける」という行為から考え、壁面にきっかけとして910ピッチでアンカーボルトをさし、そこにモビールを引っ掛ける。それを鉢にして花、直物をディスプレイした。店舗は商店街の人たちが植物を育てることが好きだ、という事と壁面という屋外にも対応出来るように植物、ガーデニング関連の店にした。この壁面、路地の前には商店街の広場があり訪れる人、商店街のおじさん、おばさん、住人の人たちが休憩し、ぼーっとしている。この壁面で水が入ってモビールが動き、はしごを動かして上っていく様子が壁画やパフォーマンス的な役割も担っている。

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○七夕賞
「つなぐ」三ツ井 岳

今回の課題では、井の頭公園周縁にオフィスを設計するというものでした。私は、建築を道と定義し、「公園と公道を繋げること」と「オフィスのスタッフと地域の人との繋がりができる空間」を念頭に進めました。タイトルは「つなぐ」です。どの方にもコンセプトややろうとしていることは面白いと言っていただき、大変光栄に思いました。その反面、建築と周囲との関係性の足りない部分、細部の設計の不十分さなど厳しいご意見もあり、自分の未熟さを感じ、もっと励まなくてはいけないことを改めて悟りました。
また、七夕賞に関してですが、審査基準は「表現」だそうです。日月会賞に際して、プレボを作り直したわけですが、苦手なプレボに時間をかけて、分かりやすいようにしたり、模型の表現をテーマに合うように工夫してみたりと、自分なりに表現にこだわっていた節もあり、七夕賞を受賞できたことは大変嬉しく思います。
日月会賞では、たくさんの方にプレゼンをし、貴重なご意見を頂き、大変良い経験になりました。授業では味わえない緊張感や達成感を経験できました。ありがとうございました。

日月会賞データ1

日月会賞データ2

日月会賞データ3

●審査委員長及び審査員講評:

審査委員長の遠藤謙一良さんに加えて、同じく竹山賞を受賞された林英理子さんに講評をいただきました。ご協力をありがとうございました。

○審査委員長/遠藤 謙一良(株式会社 遠藤建築アトリエ 代表取締役/18期・院)

太陽賞:「吉祥寺現代美術館」川田琴音

井の頭公園につながる敷地に計画された現代美術館である。
現在計画地には、公園の前にビルが立ち塞がっているが、敷地の高低差を利用し、美術館を地下に埋めることにより、街から公園へのアプローチにおいて視線を一気に拡げることを実現している。また曲面の歩道としてつくられたランドスケープが既存部分と歩道をゆるやかにつなげていること、その断面に美術館を組み込むことで環境と融合した大変ユニークな構成を実現していることにも注目したい。
模型も精緻につくり込まれ、大変明快な表現が評価された。
美術館内部の空間表現を工夫する事でより進化した作品になる事を期待したい。

満月賞:「300,000ミリメートルの本棚」遠藤 貴大

井の頭公園に接する図書館の計画である。
300,000ミリメートルの本棚がジグザグに連続して配され、斜線を壁面に持込むことで、分節された空間と奥に連続する動線が自然な形で構成されている。特に分節されたコーナーには落ち着いた読書ラウンジが天井のレベルを抑えて形成されており、空間の質も確保されている。
吉祥寺の周辺環境の分析を含めたプログラムの計画的アプローチは、多様な視点から考察されており、これも説得力のある作品の一助となっている。
敷地の特徴である公園との関係について、視覚的なつながり等の空間の工夫がさらに加われば、より計画の質が高まったと思われる。
総合的にまとめ上げるデザイン・計画力を大きく評価したい。

三日月賞:「STEERIG」斎藤有宏

国分寺・崖線に沿った土地にまつわる文化ミュージアムの計画である。
深々とした森の中に建築が見え隠れする印象的なドローイングが目に入った。
敷地いっぱいに歩道を附設するとともに、建築も地形に沿って配置されている。
模型に深く刻まれた旧街道を保存し見学できる計画は、地域の歴史と自然環境についてランドスケープを通じて学べるものであり、環境と融合した好感の持てる内容だ。
建築やランドスケープの空間をより身体的スケールで捉え表現することで、計画により説得力を持たせることが期待される。

新月賞:「Pick up a girl」田中 楓

キラキラ橘商店街を歩き、その中で発見した街の表情を丁寧に観察しながら、大きな壁面にその表情を一堂に再編し表現する計画である。街のありのままの姿を立体的に表現しており、その結果新しい魅力的な場所が創られた。展示し植物を管理する行為まで街の新しい表情に感じられる。
どこにでもある風景を立体化するシンプルなシステムと、同じ素材を用いながらコラージュ的コンセプトで新たな風景を創出した豊かな想像力が光った作品だ。

□総評

この度日月会建築賞に関わらせていただく初めての機会でしたが、私にとって大変貴重で充実した時間となりました。当初考えていたよりあっという間に時が過ぎていく作品発表会でした。
34作品*は、家具的スケールから都市的スケールまで、全く異なる4つの課題の作品でありましたが、どの作品も敷地環境と対峙し、都市や自然のコンテクストと対話し、環境に対して必要とされる新しい建築をつくり上げようとしていることに共感しました。
作品を1回、2回、3回と巡り、また学生から直接プレゼンテーションを受けることで、作品のテーマ・コンセプト・計画プロセス・機能性・空間性・作品性全体の表現といくつかのポイントで評価を進めさせていただきました。
テーマ・コンセプトに高い個性や感性を感じた作品・計画プロセス、社会性に深く向き合った内容の作品、高い表現力や圧倒的なヴォリュームの作品、一貫してバランスよく表現された作品等、少し視点を変えると評価が変わる良い作品が多数ありました。
今回の課題はいずれも東京の環境を様々な視点から考えるテーマであり、社会で求められる多様で素晴らしい課題であったことから、学生にとってもまたとない講評会であったと思われます。
結果として評価がつきましたが、その評価に関わらず、これからも質の高いコンセプトとより明快で感性溢れた表現を目指してほしいと思います。必ずその先に大きな可能性が拓けるはずです。
最後になりますが、学生、大学、卒業生が時空を共有して12時間もの間建築を共に考え語る日月会建築賞は、他にはない大変有意義な機会です。この機会を企画された日月会実行委員の皆様、建築学科研究室の皆様、参加してくれた学生に心より感謝申し上げます。

*エントリ35作品のうち実際に審査に臨んだのは34作品

○審査員/林 英理子(リュースニングランドスケープ主宰/27期)

今年で16回目という日月会賞、この賞が年々の盛り上がりを見せている証でしょうか、今年は34もの多数の作品がありました。そしてその34作品はどれも出された課題と格闘しながらも、各自の個性により独自の提案がなされていたと思います。なにより学生さん達と話していると、様々な先輩に講評をしてもらう事を楽しんでいる事がこちらにも伝わって来て、これがこの賞の醍醐味なのだろうと改めて実感した一日でした。

ただ、4時間半の中で全ての学生さんから直接プレゼンテーションを聞き、自分なりのアドバイスしてあげるのは難しく、私の場合は34人中24人に留まってしまいました。最後の30分ぐらいに何人かの学生さんが「講評お願いします。」と来てくれましたが、全員の作品に目を通す事を優先させていただいたので、お話する事ができませんでした。

4つのスタジオから出された主旨の違う4課題(長期課題4つと3つの小課題)を評価する難しさも感じましたが、その中でも「身の丈の家」の課題が求めている最終提出物が他3課題とは異なっているため、直接学生さんと話をしないと分からない事が多かったと思います。(鈴木スタジオの5作品の話は全て聞く事ができ、どの作品も印象的で私も大変楽しみました。)
今後さらに応募作品が増えるならば、学生さんの側が各自提出した課題内容によっては積極的に審査員を捕まえるなどの“作戦”がなければいけないのではと感じます。学生さん達には、やはり学生生活も日月会賞も受け身ではだめであるという事をこのような機会を通して感じてもらえたらと思いました。
また、研究室主導のカリュキュラムでなない日月会賞というイベントを考える時、日月会執行部の方々もさる事ながら、学生からの積極的提案などにより講評や審査のプロセスももっとダイナミックなものになる可能性を感じましたので、今後の展開を期待しております。

今回、太陽賞「吉祥寺現代美術館」の川田琴音さんと、満月賞「300,000ミリメートルの本棚」の遠藤貴大君はどちらも残念ながら直接話しを聞く事は出来ていません。ただどちらの作品も模型、プレゼンボードともに表現力が優れており、直接話しを聞かなくとも設計主旨から設計内容まで十分印象に残るものでした。二作品とも「都市の環境単位・井の頭公園周縁」の課題であり、他の13作品も力作揃いだった印象があります。地形にとけ込ませようとした美術館(太陽賞)と、本棚の構成から構築的に展開させた図書館(満月賞)、ある意味対象的な作品であったと思います。個人的には後者の作品は公園側と図書館の間にできてしまった擁壁が残念に思うのですが、そのあたり直接本人に話を聞きたかったです。

三日月賞の「国分寺・崖線文化ミュージアム-STREERIG」齋藤有広君の作品は敷地全体、及び周辺に及ぶ提案で、建築内部、外部空間を一体的にミュージアムとして提案している所に好感を持ちました。ただ、敷地の持つ地理的、植生的特性を考える時、手を加える所(構造物を挿入する所)と保全する所のバランスにさらに配慮すればより「崖線」を体感できる場となったのではないかと思いました。

新月賞「身の丈の家-Pick up a girl」の田中楓さんは受賞後に自身が語っていたように、彼女が楽しんで1/1の図化作業を行った事がわかるプレゼンテーションでした。また、下町の人々の生活のふるまいや、しつらいを彼女の感性で読み取り、物を引っ掛けるという人々の行為を花屋に展開させた所は秀逸だと思います。雨水が「モービル鉢」の動きと下部に設置した水琴窟まで一連の流れとなって作用する仕掛けが施されていれば、なにかアート作品へと展開するような可能性を感じました。

最後に、今回どの作品にもきらりと光るものを感じましたし、学生さん達と日月会の方々の熱意を感じた一日でした。これからの日月会賞のさらなる展開を楽しみにしております。
ありがとうございました。

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