第13回日月会賞 報告

開催日:

2011年7月16日(土)

審査員:

審査員長/藤井香(30期)、増田信吾(40期)
審査員/山本幸正(7期)、笹口数(20期)、林英理子(28期)、北川貴好(32期)、棚橋玄(41期)

日月会賞 受賞結果:

太陽賞:高橋義明/菊地スタジオ
「屋根のある谷」

[作品の主旨]
カフェとショップを併設したアートギャラリー。
敷地は荒木町に存在する池のある谷。
この谷にひとつの大きな屋根をかける。
大きな屋根は、東京にひろい空とたくさんの屋根が見える風景をつくりだし、
屋根から垂直に下りた壁は、のぼる・くだるという谷特有の感覚を高める。
屋根の下で木漏れ日のような光が降り注ぐ中、人々は回遊しゆっくりとした時を過ごす。
僕は一貫して、この敷地が東京であること、谷であること、そしてギャラリーであることを特別なことだと考えながら設計しました。僕が思い描いた風景が、気持ちのいい風景であったらいいなと思っています。 

[受賞後の感想]
1日でたくさんの人に自分の設計したものを見てもらう機会は今までなかったのですごく楽しかったです。先輩方の優しくて、時には厳しかった意見は本当に多種多様で面白く、プレゼンしていく中で新たな発見がたくさんありました。
この日月会建築賞で得た経験を活かし、ムサビを!日本を!世界を!盛り上げていきたいと思います!ありがとうございました!!

太陽賞

太陽賞

太陽賞

太陽賞

満月賞:小田権史/長尾スタジオ
「Roji House」

[作品の主旨]
敷地である神楽坂は、歴史ある路地の風景があります。そこはそれぞれの家から生活感があふれていて、住民の立ち話の場所になったり、住民が掃除をする風景があるなど、神楽坂の路地ならではの空間が広がっています。しかし巨大現代建築により生活感は薄れ、路地の特徴は薄れてきています。そこで路地の土地割りでボリュームを積んでいく建築を提案しました。前半課題のインスタレーションでは実際の路地に1:1で図面を引き、架空の家を表現したことにより路地が室内へと変わることを実感しました。この建築では家からの物音、人の気配、料理の香りなどの生活感がにじみ出ています。神楽坂にしかない路地を建築として残していく、コンプレックス建築です。

[受賞後の感想]
日月会建築賞でいろんな方の意見を聞けて勉強になりました。同じ大学を出られた先輩方の意見はとても的確、かつリアルでとても参考になりました。結果として満月賞という光栄な賞をいただけてとても感謝しております。これからも努力を怠らず、日々邁進していきたいと思います。

満月賞

満月賞

満月賞

三日月賞:小名智子/高橋スタジオ
「木、ミル。」

[作品の主旨]
奥多摩の鳩ノ巣渓谷に、宿泊施設を設計計画しました。
奥多摩は、週末になると登山者などリフレッシュするために、東京都心から訪れる人が多くいます。そこで、そのような人のために、常に自然を感じることのできる宿泊施設にしました。木の茂っているところに宿泊施設を計画することで、さまざまな角度、高さから木を見上げたり、見下げたりすることができ、自然の中にいることを常に体感できるようにしました。

[受賞後の感想]
今回の講評会で、さまざまな意見をいただいて自分に足りない部分や、見直さなくてはならない部分に気づき、もっと幅を広げて学びたいと思いました。そして、今後の制作の糧にしていきたいです。

三日月賞

三日月賞

新月賞: 野田樹里/高橋スタジオ
「地形に住まう」 

新月賞

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第13回 日月会建築賞 審査委員長講評

審査委員長:藤井香(30期)

■太陽賞 高橋義明「屋根のある谷」
通常、大屋根を覆うことによって、その下に広がる大空間では多様で自由な空間の定義が発生する。この作品は、敷地である荒木町のすり鉢状の地形の底に設置された、シンボリックな広場のような求心性の強い大屋根が印象深い。
高層ビルが林立する中、蛇行する細い路地を下降し、一番底にある大屋根のある空間へ到達する過程は、まるで森の真ん中の光が差し込む場所に辿りついたような感覚を抱かせる。もし、大屋根の下で起こりうる様々な現象を予測した多様性のある大空間をデザインすることができれば、更に強いメッセージとして伝わったのではないだろうか。

■満月賞 小田権史「Roji House」
プロジェクト模型に強い独創性を感じた。
昨今の複合ビルは縦に上へと伸びてゆく。そんな中、この作品は神楽坂のスケールと密度をうまく読み取り、動線と上下左右を組み合わせた結果、魅力的な建築空間を都市に組み込むことに成功した。図面上の表現力を強化すれば、更に完成度の高い作品になったはずである。

■三日月賞 小名智子「木、ミル。」
配置と視線と快適であること。
3つのバランスを、日常を離れた宿泊施設で過ごすために考慮すべき要素について真摯に向き合っており、徹底したスタディによって生まれたデザインにも好感を持てる作品である。

■新月賞 野田樹理「地形に住まう」
1枚のパースが作品の世界観を抒情的に表現していた。
海岸に沈む美しい夕日と対峙したとき、有機的な建築は地形と融合し、新しいランドスケープが生まれるであろう可能性を秘めているように感じた。

総評
私が拠点を置くスペインの建築学部学生の技術的な力量は、ムサビ学生より上かもしれないが、今回ムサビで拝見した、敷地や状況のコンテクストを読む洞察力や、コンセプトからデザインへシフトさせる手法などを捉えた作品の方が建築作品として魅力的であった。

残念ながら入選に至らなかった田中裕大氏の「Flat Gallery」は、私個人としては太陽賞に投票した。敷地に対する読解力、設計のねらいへの解答、作品の具体性とコンセプト、そしてプレゼンの総合的なレベルの高さを評価した。
また、大川周平氏の「神楽坂であること」、飯塚あやめ氏率いる6名の女性グループの「たけシェルター」も投票段階で迷った作品である。
大川氏は建築、本屋、作家、都市性のソフト面での新しい関係性の提案を行った。今後の可能性を想像するのが楽しくなるような世界を作り上げていた。
「たけシェルター」は東北の被災地での設置を仮定した、竹を用いた低予算の仮設テントである。女性が少人数で短時間で設置するよう計画されており、モデュールを組み合わすことで増設も考えているという。ぜひ被災地での設置実現に向け動き、レポートを継続的に報告できる環境を整えて頂きたい。
しがらみに捉われず、思いっきり手と頭を動かす事が出来る今のこの時期、様々な分野からの多くの興味をインプットし、課題に取り込む毎にアウトプットする事を繰り返す。その蓄積がムサビを卒業した後、自分自身を支える大きな糧になるのだと思う。

審査委員長:増田信吾(40期)

■太陽賞
この作品は窪地である敷地に対し、なるべく多くの光を建築内部へと、そしてそこから外部へと導く、光あふれる建築の提案であったと感じる。
敷地は状況的にけして良い状態とはいえない場所を肯定的にとらえ、積極的に設計行為がなされている。
敷地サーベイから設計、そしてプレゼンテーションまで一番バランスのとれた作品となっていた。
しかし、もう少しまとめあげることにより、本来やりたかったことをよりクリアにし、設計に落とし込んでいくことも大事であると感じた。

■満月賞
この作品は神楽坂の細い路地が沢山ある裏手に住居と商業の複合施設を設計している。
細い路地のすぐ隣に設計されるこの建築は、路地の特徴をふんだんに取り込み引用している。
果敢にやりたいことに対しまっすぐに取り組み、難易度の高いプランニングに対し、
しっかりと向き合った苦労が見えるとても男臭く、うれしくなる建築提案であった。
しかし、もう一つ踏み込むべき大事なことがあると感じた。
それは、なぜ細い路地の横にさらに平行して細い路地を設計したかったのか。
答えが出るとさらにクリアに設計が加速する気がした。

■三日月賞
この作品は奥多摩の川沿いの崖の途中に等高線と平行して小さなボリュームが連なる建築を設計している。
素直に気持ちが良さそうな状況がすぐに想像できた提案であった。
断面方向でも連なりに対して考えられていて、弱点のない提案であった。
欲を言わせてもらえば、もう少し設計者の「毒」がみたかった。

■新月賞
この作品は葉山の浜辺に敷地はある。
砂浜のようであり、古墳のようでもあり、山のようでもある繋がった線状の丘の内部がくり抜かれ洞窟のようになっている宿泊施設の設計である。
設計はまだまだ未完成であるが、一番イメージがはっきりとしていた。
そして上位の賞に見られるバランスや器用さが良い意味でなかった。
想像が先へ行き、手が追いついていない、これからの作品である。

総評
応募作品はそれぞれに言いたいことはいったのですが、全体的に建築感がそれぞれにもう少し違った解釈があっても良いのかなと感じました。
良い意味でも悪い意味でも世の中や建築業界での「建築」、そして「建物」と「建築」に対する価値観をもっと感じたかったです。
与えられたことを少し疑い、そして考え抜いた、そんな作品をもう少し見たかったです。
っと、ここまで偉そうに講評をしていますが、僕もまだまだ自分の中での建築の在り方を模索している、皆さんと同じ立場でもあります。
講評会は学生に戻った感覚で皆さんとお話ができとても楽しい時間でした。
もっとしゃべりたかった、聞きたかった。そんな一日でした。
どうもありがとうございました。

日月会賞の審査風景等はこちらをごらんください。
第13回日月会賞速報
第13回日月会賞〜続編

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